音楽家として生き、音楽家として生き切る、桑田歩さんの英雄”再臨”コンサートから私が学んだこと
新年1月4日ににとてつもない豪華メンバーの臨時編成オーケストラによるコンサートがあった。
コンサートのタイトルは
”再臨” 桑田歩の英雄。 実は私はこのコンサートの意図を全く分かっていなかった。
桑田歩さんとは2019年にグループコンサートでご一緒した事があり、奥様のバイオリニストの佐分利さんとそれは素晴らしいチェロの演奏をなさったから、桑田さんの音楽で、しかも、我が家からは徒歩圏で行ける会場のコンサート、そして何だか凄まじく豪華メンバーのオーケストラ、、これは行かねば!と直感。又コンサートの告知をしていた音楽家たちが全員友人や知人だった為即座にチケットの申し込みをし、楽しみにしていた。数日後にはチケットは完売と知らされた。
このコンサートがこんな重要な重厚な意図と意味を持ったコンサートだったとは、、、、一生忘れない。超貴重なメッセージを送って下さった桑田さんに感謝、桑田さんの夢を実現する為に奔走されたご友人の方々、主催者の方々、熱い心を持った音楽家の皆様たちに唯々感謝。
2枚申し込んでおいたチケットだったが、行くはずの友人が風邪で当日ドタキャン、初稽古でどなたに声をかけようかと探している暇もなく、幸いホールの近所に住む息子の友人のママ友をお誘いでき、待ち合わせ。ただコンサートが楽しみと会場に赴くと、40分前にすでに満席、当日券を求める方々は諦めて帰らなければならない程の混み合い。只事ではないと思ったものの、まさか、こんな重要なコンサートだったとは、、、、、
まず、一曲目の、カザルスの鳥の歌で 舞台に出てこられた桑田さんがあまりにもお痩せになられていて、足取りが空気のようで、???、、そして演奏も超Sensitive,, 張り詰めた細い弦のようで、憂に満ちていた。
そして英雄になると、椅子に座っての指揮で、すぐ手が届くところに飲み物のボトルが設置され、ええ、大丈夫かしら?という雰囲気、、
座ったままでの指揮でも桑田さんの 上半身と腕は 空中に、音楽の指令をオーケストラに発信しながらエネルギッシュに舞う。それに応えるオーケストラの反応も素晴らしくて、指揮者とオーケストラが一体になっているのが良く分かった。
楽章が進むにつれて、本当に精神的に盛り上がり、それは素晴らしい演奏/音楽 となった。演奏終了後
やまない拍手、涙を流されているオーケストラの方々、長〜い長〜いお辞儀、何度も何度も、、、
桑田さんがお病気であろうことは私にも分かったけれど、後で友人から、彼が12月に癌が再発して余命が後2ヶ月と宣告され、本来は病院のベットに安静に寝ていなければならないところを、事前のお別れとして、コンサートをしたいと言う希望に、音楽家たちが急遽呼びかけてオーケストラを編成、企画して数週間で立ち上げたコンサートだった ことを聞いて、驚愕、、、
これを書いているうちにも涙が出てきます。開演40分前でもすでに席が埋まっていて、私と友人は前から3列目の席で、桑田さんの表情、動き、オケの方々の表情も全て見ました。
そんなこととも知らずあの張り詰めた空気を受け止めていたのはかえって良かったのかもしれない、お隣には可愛い坊やも座って聞いていた。でも一挙一動が脳裏に焼き付いている。どんなお気持ちだったのだろうかと考えると、、、、、胸がつまる。
桑田さんご夫妻とご一緒した2019年のコンサートの記念写真の端っこに桑田さんが写っていらして、その写真を私はピアノの脇にずっと飾ってあったのですが、つい先日、生徒の一人が、””これは先生の発表会の写真? と聞いてきて、苦笑、この人は誰?と生徒ちゃんが写真の中の桑田さんを指して問われて、あれ、こんなところに桑田さんが写っていたんだ?と思ったばかり、だったのです。女性ばかりの席で決して出しゃばられない、物静かな方でしたね。
これから先、いつもピアノに向かって座る時、この写真を見るとき、私はこの桑田さんのコンサートのことを思うでしょう。もしかしたらこれが最後に出す音かもしれない、最後の練習かもしれない、最後の譜読み、初見かもしれない、あるいはレッスンかもしれない、全て、そのつもりで 真剣に、取り掛かろうと、思った。
最上の練習をして、最上の音を出して、最上のレッスンをして、
たとえ最後の OO であったとしても全て全く後悔のないように取り組もうと、
母のことでもこれと似た様なことを感じていましたが、まだお若い桑田さんが音楽家として生き、音楽家として燃焼されていた あの真剣な時間を空間と空気を味わったこと。一生忘れないだろう。
桑田さんが奇跡的にでも快方に向かわれることを祈って止みません。と同時にあなたの覚悟と音楽への愛と情熱を見せてくださったこと、本当に感謝しています。
ありがとう、桑田歩さん。ありがとう、コンサートを実現してくださった皆様。
感謝を込めて。
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